第14章 Witness
しばらく来ないうちに隣町も景色が変わったところがある。
俺はそれを一つ一つ確かめるように、散歩がてら歩き回った。
たまに立ち止まってウィンドウショッピングをしたり、休憩がてらドリンクスタンドに立ち寄ったり、1人でもなかなか楽しいものだ。
「あ、そうだ、CD。」
本屋で面白そうな単行本を立ち読みしていてふいに本来の目的を思い出した。
というのも、有線で新曲が流れ始めたからだ。
俺は本を元の位置に戻し、この町で一番大きなCDショップを目指した。
店の入れ替わりが激しくても、さすがにあの規模の店は潰れたりしないだろうと踏んで本屋の外に出る。
外は陽が沈み始めていた。
俺は足早に次の目的地へ向かった。
「え~っと…新譜新譜…」
俺の予想通り、CDショップはそこにちゃんと建っていた。
邦楽新譜のコーナーを探して辺りを見回しながら適当に歩いてみる。
「お、あった…え?」
邦楽コーナーへ差し掛かったとき、俺は大きく宣伝された目当ての新譜を見つけた。
しかし同時に、見つけなくていいものまで見つけてしまった。
俺は咄嗟に近くの棚の陰に隠れる。
「小雨と、ニノ…?」
俺は目を疑った。
一度目線を逸らして自分の腕を自分でつねってみる。
痛い。
夢じゃない。幻でもない。
そしてもう一度目線を戻す。
そこには確かに、仲良さそうに1つのヘッドフォンを2人で使って音楽を聴いている2人がいた。
しかも小雨の方は普段自分で選んで着たりしない花柄のワンピース。
普段じゃ絶対しないようなアップにした髪形。
パッと見ただけで特別な外出なんだということがすぐにわかる。
「どういうことだよ…」
俺は2人に見つかる前にすぐに店を出た。
店を出る直前、一瞬2人の方を見た時、ニノと目が合った。気がした。
どういうルートで帰宅したのか全然覚えていない。
俺はいつの間にか部屋着で、朝起きた時と同じようにベッドに仰向けになっていた。
「最近変だったのってこのことかよ…」
俺は虚しい気持ちに襲われた。
小雨の恋愛に口出しする権利はない。
ニノの恋愛にも口出しする権利はない。
でもニノの彼女はどうしたんだ?
別れたのか?
それって小雨が原因で…?
考えれば考えるほど、泥沼に嵌っていく気がした。