第13章 Puzzle
でも、横並びの椅子で隣に座っているニノ君のことも気になってしまっている。
ニノ君はそんなつもりでデートしているわけではないのに。
仕方なく、私とデートしなくてはならない状態なだけなのに。
翔君への気持ちは何?
ニノ君への気持ちはどこへやればいい?
私はだんだんわけがわからなくなっていた。
「そろそろ行きますか?体調はどうです?」
「うん。もう大丈夫、ごめんね。」
「いえいえ。今日は早めに解散しましょうか。」
「あ、ちょっと、帰る前に1個寄っていいかな?」
2時間ほどのんびりして、遠くの海も夕焼け色に染まり始めた頃、ニノ君はきっと外が冷えてきたのを気にして切り出してくれた。
すっかり帰るモードで伸びをしているニノ君に、私は1箇所、行きたい場所を提案をした。
快諾してくれたニノ君を連れて向かった場所はCDショップ。
好きなアーティストの新譜が昨日発売だったので買うつもりでいたのだが、売れ行きが良かったのかどこにも置いていなかったのだ。
せっかく隣町まで来たので一番大きいCDショップにならあるかもしれないと、わがままを言わせてもらった。
「あったぁ…!」
私は新譜コーナーにずらっと並べられたお目当てのCDに駆け寄り、表と裏を何度もひっくり返して本当に探しているものか確認をした。
後ろからニノ君がついてきて、陳列されているCDを1枚手に取った。
「へぇ~、このアーティスト好きだったんですね。」
「そうなの!聞いたことある?」
「まぁ、有名なのだけなら。」
「え~!カップリングの曲もすっごいオススメだよ!
あ、ほら試聴器あるから聴いてみてよ!」
私はCDを見つけられた興奮と、自分以外の人が曲を知っている興奮で盛り上がっていた。
陳列棚の横に試聴器がついているのを見つけて、私はヘッドフォンを耳に当てて何曲かコロコロと流しながらオススメの曲を選曲した。
「あ、これとかニノ君好きかも!」
「どれどれ~?」
一つのヘッドフォンの耳をお互いの耳にくっつけ、至近距離で一緒に曲を聞く。
「あ~、確かに。俺こういうの好きです。」
「でしょ!」
私はニノ君の言葉に嬉しくなって、ニノ君の方を向いた。
バチッと合った目線は驚くほど近くて、私は思わず息を呑んだ。
慌てて視線を試聴器に戻し、次のオススメ曲までコロコロと画面を動かす。
