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△ Campus Life

第13章 Puzzle


ニノ君とのデートは順調に進んで、ニノ君はいつものニノ君だったり、いつもと違うニノ君だったりして、私の心臓は鳴りっぱなしだった。

ニノ君って、こんな感じだったっけ…?
こんな…男の子、だったっけ…?

私は握られた右手をまじまじと見つめて、夢か現実かわからなくなっていた。



「呼ばれましたよ。」
「へ?」



おやつ時のパンケーキ屋さん。
周りにはカップルや女の子のグループばかり。
人気のお店だけに少し並んだが、そんな風に待っていることさえカップルらしくてなんだか落ち着かなかった。

私がニノ君のことを考えているうちに名前が呼ばれたらしく、ニノ君は握った手を少し引っ張って「行くよ」の合図をした。

店内は混んでいて、私達はテラス席に案内された。
遠くに海が見える素敵な席だ。



「あの海、懐かしいですね~。」



ニノ君は椅子に深く腰掛けて背もたれにすっかりもたれかかり、海を眺めながら目を細めた。
私もニノ君の視線を追うようにして海に目を向ける。

あの海の日、つい最近の出来事なのにもうはるか昔のように感じる。
今日、こうしてニノ君と擬似デートすることになったきっかけの日でもあって、その元凶の人がどこかで今も見張ってて。
ただニノ君が最後についてしまった嘘を消化するためのデートなのに、私はやけに彼を意識してしまって。



「懐か、しいね…。」



私はなんだか切なくなって、言葉を詰まらせた。



「あの時はなんだかんだで楽しかったです。
小雨が足つって不貞寝して、翔さんがじゃんけんで負けて一人残って打ち上げ花火してて。ふふっ。」
「翔君…」



「翔」という名前。
それを聞いただけで私の体は一気に冷や水を浴びせられたみたいに体温が下がった感じがした。
さっきのニノ君とは違う意味で心臓が跳ねたのが分かる。



「どうした?」



私が神妙な顔で固まっているのでニノ君が優しく声を掛けてくれた。
心配そうに顔を覗き込んでくる。



「あ、だ、大丈夫。ちょっと疲れちゃった、かな?」
「…そうですか?じゃあ良くなるまでここでのんびりしましょうか。急ぐ旅じゃないですし。」
「う、うん…。」



運ばれてきたお水を口に含んだ。
ひんやりと冷えた水で冷静になってきた私は唐突に、この現場を翔君に見られたくないと思った。
勘違いしてほしくないと。
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