第12章 Date
両手に一つずつネックレスを乗せ、交互に見つめては悩むを繰り返す。
すると、店内を一周してきたニノ君が後ろからそれを覗き込んだ。
「ネックレスですか…」
右手にはピンクのスワロフスキーが輝くシンプルなお花の形のネックレス。
左手には少し大振りのパールが揺れるデザインのネックレス。
ニノ君は左右を見比べるのに目線を一往復させて、すぐに右手のネックレスを取った。
「あ…あれ?」
「今日はデートですから。」
ニノ君は取り上げたネックレスをレジに出して、さっさとお会計してしまった。
その流れのままですぐにお店を出て行きそうだったので私は慌てて左手に残ったネックレスを元の位置に戻し、ニノ君に続いてお店を出た。
「後ろ向いて。」
「あ、は、はい。」
店外に出るとすぐ、ニノ君はテンポ良く私を誘導する。
私は言われるがままに後ろを向いた。
ネックレスをつけてくれるらしいので、私は襟足に落ちた髪を前に持ってきて、そのままおとなしくしていた。
「はい、こっち向いて。」
「はいぃ。」
ネックレスをつけ終わり、ニノ君の方を向く。
ニノ君は満足そうににっこり笑うと、ショーウィンドウを指した。
反射で自分の姿がよく見える。
「やっぱりこっちにして正解ですね。」
胸元で小さく輝くネックレス。
今日の花柄ワンピースにもマッチしていて、自分で言うのも変だけど…とっても可愛い。
ショーウィンドウに近づいてまじまじと見てみると、私の動きに合わせてスワロフスキーがキラキラと輝いていた。
「ニノ君…ありがとう!」
私は急にすごく嬉しくなって、さっきのニノ君みたいに満面の笑みでニノ君にお礼を言った。
ニノ君は一瞬びっくりしたような顔をして、それから小さく、本当に小さく、息を吐くみたいに笑ってから口を開いた。
「…輝いてますね。」
「綺麗だよね!キラキラして!」
「違います。」
「え?」
私はスワロフスキーのことだと思って思いっきり同調したが、すぐに否定されて首をかしげた。
するとニノ君は、私の髪をひとすくいしてサラッと靡かせる。
「笑顔が、です。」
急に世界がスローモーションになったみたいに、周りの通行人も、お店のドアが開く音も、近くで鳩が羽ばたいていくのも、全てが急にゆっくりに感じた。