第12章 Date
週末まで、私はなるべく翔君に変に思われないよう、いつも通りに振舞うように心がけた。
演技で彼女役をすることはわかっていても、やっぱり急にニノ君を意識してしまう。
ニノ君は「その時だけでいいんだから普通にしてくださいよ。」なんて言うけど、私はその時だけの切り替えができるほど器用な性格はしていないのです…。
そして迎えた週末。
全然眠れなかった私は、翔君が目覚めるより遥かに早くベッドを抜け出して支度を済ませると家を出た。
擬似デートとはいえ、それっぽく見せなければいけない。
しかしデートというものが久々で、何を着て良いかさっぱりわからなかったので、翔君お気に入りの花柄ワンピースで行ってみることにした。
髪型も、いつもは巻いているだけだけど今日はアップにしてみたり。
我ながら、どこからどう見てもデートに行く人になったと思う。
「おっ、気合入ってますね。」
待ち合わせ場所に着くと、すでに待っていたニノ君が上から下まで眺めてそう言った。
「一応、デートだもんね。」
「さ、じゃあ行きましょうか。」
ニノ君は左手を出して私を待つ。
なぜかものすごく緊張して、私はドキドキしながらその手に自分の手を乗せた。
今日のデートは完全にニノ君プラン。
隣駅で待ち合わせとだけ伝えられていたのだけれど、隣町はおしゃれなスポットが多くてまさにデートといったムードが漂っている。
「えっと、今日はどこに行くの?」
「小雨ちゃんの好きなものがあるとこ。」
ニノ君はそれだけ言うとウインクして見せた。
その悪戯な表情に少しだけ胸が跳ねた。
ニノ君に導かれるままに辿り着いたのは最近オープンしたばかりの雑貨屋さん。
店主さんのハンドメイド作品を置いていて、どれも一点もの。
「わぁ…!可愛い!」
店内は小ぢんまりとしていたがファンタジーな森の世界が広がり、売り物も展示作品であるかのように陳列されていた。
一気に夢の世界に飛んだような気持ちになって、私は夢中で雑貨を眺めた。
ニノ君も細工をまじまじと見てみたり、明かりに透かしてみたり、彼なりに楽しんでいる様子だった。
「う~ん、これがいいかなぁ…でも、こっちも…」
せっかくなので何か買っていこうと決めたものの、2つまで絞ってその先が決まらない。