第1章 彼と別れた
薄暗い帰り道。
隣にいた君は居ない。
今さっき別れたから。
あぁ、スッキリした。
これでやっと友達が作れる。
そう思うと罪悪感なんて無かった。
彼氏よりも友達を優先する俺は変なのか?
まぁ、人それぞれだろ。
クロハもすぐに新しい恋人見つけるだろ。
あんなイケメンに告白されたら答えは『はい』しか無いもんな。
なんて内心笑いながら家に帰る。
そして、部屋のベッドにダイブした。
明日、早速友達作りでもしてみよう。
楽しみだなぁ。
俺は呑気にそんなことばかり考えていた。
後先の事を考えずに。
次の日、いつも通り1人で教室に行くと、
冷たい目で見られることはなくなった。
代わりにザワザワしている。
いつもクロハと登校してるから不思議がられてるんだな。
そんな時、姫迫が口を開いた。
「琴美ちゃんはもうクロハ君と別れたんですのよ。ねっ」
昨日の黒い笑みとは別物の優しい笑み。
俺は『はい』と返事して微笑んだ。
すると、
「琴美ちゃん、クロハ君と別れたんだ…なら嫌がらせする必要ないか」
「嫌がらせしてゴメンね!」
「嫌だったら断ってくれてもいいんだけど、友達になってくれないかな?クロハ君と付き合ってるって聞いて嫉妬してたけれど、本当は仲良くなりたかったんだ」
わらわらと俺の机に集まってくる女子達。
女子の気持ちの変わり様はなんなんだよ。全く…
でも、
友達、やっぱり出来た。
別れれば優しい人達だってことは分かってたし。
やっぱ嫉妬って怖いわ。
人を変えるもんな。
苦笑いを浮かべながら、俺は周りの女子とアドレスを交換した。
「……琴美…」
後から入ってきたクロハがネックレスを握り締めながらポツリと俺の名前を呟いた。
俺は猫を被って、
「おはよ、クロハ君!」
偽りの笑みを浮かべてクロハに挨拶をした。
その後はやっと出来た友達と駄弁ったりしていた。
そして、今度の日曜日にカラオケに行くことが決まった。
楽しみだ。