第1章 彼と別れた
昼休み、時間ぴったりに校舎裏に行くと、
腕組みをしている姫迫とその取り巻きがいた。
俺が何か抵抗すれば取り巻きになにかさせんの?
うっわぁ、自分が弱いから取り巻き使うんだ。
弱いやつ。
口に出したら厄介になるだろうから言わないけどさ。
「姫迫さん、どうしたんです?」
「どうしたんです?じゃありませんわ。いい加減クロハ君と別れてくださらない?」
お嬢様口調は健在か。
その口調と化粧なんとかすればクロハと付き合えたかもしれねぇのに。
それより、やっぱりか。
姫迫の手にはカッターがある。
やっぱりワンパターンすぎだろ。
「別れないというのでしたら、貴女は嫌われ者になりますわよ?」
「………」
「良いのですか?全校生徒から蔑んだ目で見られるんですのよ?」
なに?こいつ、俺のこと地味に心配してくれてやんの。
まぁ、嫌われ者になるのはごめんだわ。
さっさと言うか。
「今日、別れる予定でしたから。ご心配なく」
「え?」
「へ?何を驚いてるのですか?もう、飽きたんです。クロハ君の事」
あえて酷い言葉をチョイスする。
姫迫は予想外の事で驚きを隠せていない。
まぁ、自分で言うのもなんだけど。
ラブラブだったからな。
首に付けているネックレス、
クロハとお揃いで買ったもの。
俺はそれを強引に外した。
ブチッと細い鎖が切れる。
「目の前でこれを捨てます。クロハ君をよく見ていた貴女なら分かりますよね?これが、クロハ君とお揃いで買ったものだという事が」
「え、ええ」
「それじゃあ……えいっ!!」
ネックレスを茂みの中に投げ捨てた。
これでもう、俺の気持ちがクロハに向いていないことなど分かっただろう。
姫迫は嬉しそうな表情を見せた。
「ふふふ、これでクロハ君は私のものですわー!」
あー、うるせぇ。
まぁ、これで一件落着だな。
後は放課後にクロハに別れを告げるだけ。