第1章 隠れた狂気
制服に着替え終えた俺は、カバンを肩にかけて薄暗くなった廊下を歩いていた。
放課後の廊下は物凄く不気味だ。
明るい時は見慣れた風景なのに、
薄暗くなると不気味に思える。
オカルト系が苦手な俺は早足で玄関に向かった。
そんな時。
トントン
「ひぃっ!?」
突然肩を叩かれ、小さな悲鳴をあげる。
後ろを振り返ると、呆れ顔の花宮先輩が居た。
俺の肩を叩いたのは花宮先輩だったらしい。
嗚呼驚いた。
ぺたりとその場に座り込む。
「琴美はホント呆れるほど怖がりだな」
「仕方ないんですよ…」
苦手なものは苦手なんだ。
俺は靴棚で上履きに履き替えて校舎を出る。
外は薄暗く、うっすら星が見えた。
さて帰ろう。
そう思い、歩き出そうとしたが、
花宮先輩に腕を掴まれて動けなかった。
「一緒に帰えんぞ」
「え?」
「さっさとしろ」
すると、グイッと腕を引かれて歩き出す。
自分勝手だな。
まぁ、そんなところも好きなんだけど。
なんて考えたりして。
薄暗くて花宮先輩の表情はよく見えない。
俺としては好都合だ。
絶対、俺の顔は真っ赤だ。
そんな俺の顔なんて見せられるわけがない。
手も繋がれているから、
俺のドキドキが先輩に伝わっていないか心配だ。
にしても、
カッコいい。
まじかで見る花宮先輩はやはりカッコよくて。
見惚れてしまう程だった。
けれど、なんとかバレないように頑張った。
見惚れていたなんてバレたら恥ずかしくて仕方ない。
しばらくして家に着く。
「琴美、じゃあまた明日な」
「はい」
離された手から花宮先輩の温もりが消える。
もう少し繋いでいたかった。
なんて我が儘も言えないから我慢する。
明日も頑張ろう。
そう意気込んで1日を終えた。