第3章 初めまして
一頻り(ひとしきり)泣くと、親戚の前だった事を思い出し、スミマセン!!と、後ろに下がり頭を下げた。
「いいや、いいんだよ。理一」
「はい」
離れた所に座っていた理一は、の隣に座った。
「さんはいい子だね。大切にしておやり」
『え、えっと…あの…おばあちゃん?』
「もちろん」
「この人なら、理一も大丈夫だね」
色々と、話が飛躍しすぎる。何か、色々足りない気がするんだけど…
何やら、恋人が実家に結婚の挨拶をしに来ているような気がしないこともない。の頭の中では、ひたすら栄と理一の言葉がリピートされている。
「おばあちゃん、何だかちゃんがオーバーヒートしてる。ちょっと、考える時間をあげて!」
理香の言葉に、理一がの顔を見ると上の空だった。
その後、万里子や直美に肩を叩かれ意識が戻ったのである。
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「なんだい、理一とお似合いだから恋人かと思ったよ」
「だから、違うって言ってるでしょ。ちゃん、ゴメンね。皆、勘違いしてて」
『いえ、だ、大丈夫です』
ようやく、誤解は解けたものの皆、残念な顔をしている。
暫くして、理香にお手洗いを教えてもらい、少し縁側で涼んでいると理一が隣にきた。
「さっきは、ごめん」
『大丈夫だよ。理一さんこそ、私とお似合いって言われて嫌じゃなかった?』
「寧ろ、嬉しかった。何だか、昔に戻ったみたいだったし、おばあちゃんもプレゼント気に入ったみたいだったよ」
『よかった』
ふぅ、と息を吐くと理一がさっきの疑問を投げ掛けた。
「日本代表…」
『え?』
「辞退したのって、ご両親の事があったから?」
『それもある』
「それも?」
『実は、靭帯を切ったり怪我も続いてて…迷惑かけちゃうと思ったからなんだ。それに、そろそろ落ち着こうかなって』
足をぷらぷらとして、庭の景色を眺めている。
「落ち着くって?」
『結婚でもしようかと…でも、ダメみたい。皆、元オリンピック代表だから、珍しがって付き合おうとしてるのが見え見えで…子供は好きだけど、このまま1人でもいいかなって思えてきて…』