第3章 初めまして
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長ーい机に、親戚のほとんどが座っている。理一の隣には、がちょこんと腰をかけて回りを見渡した。
「へぇ、それで来たの?」
理香がある程度の内容を聞き出した。
『はい。偶々、休みで買い物の帰りに…り、理一さんと会って、おばあちゃんの誕生日だからおいでって言われて…あ!そうだ、おばあちゃん』
おばあちゃんの近くで正座をして、挨拶をした。
『初めまして、 です。この度は、お誕生日おめでとうございます。急にお邪魔してしまって…すみません。それで、小さい物ですがプレゼントと思いまして』
と、栄の前に小さな箱に包まれたプレゼントを差し出した。
「まぁまぁ、そんな事気にしなくても大丈夫なのに、ありがとうございます。さん。開けてもいいかい?」
『はい』
「おや、万年筆」
『えぇ、昔、理一さんがおばあちゃんは教師だったってお聞きしました。それで、私がお世話になっている方の所の万年筆がとても書きやすいんです。なので、是非と思いまして。えっと…』
「そうかい、本当にありがとう」
ニッコリ笑ってくれた栄に、もほっとして笑みが溢れた。
「ところで、さん」
『は、はい!』
「休みって言ってたけど、どんな仕事をしてるんだい?」
『空手を、空手の道場を開いております。昼間は、大人の方。夜は小さな子達を教えています』
「そうかい。ご両親は?」
『いません。亡くなりました』
「「えっ!?」」
と、理香と万里子が声を上げた。
『一年程前に、二人で旅行に出掛けてトラックが後ろから突っ込んできて…玉突き事故でした』
「そうだったのかい。悪い事を聞いたね」
その時、理一は確信した。あの時の、辞退した理由がこれだったのだと…
『いえ、大丈夫です。道場の生徒さん達が、本当に助けてくれて。感謝してもしきれない位…っ』
喋っている途中で、声を詰まらせた。食事をしながら見守っていた他の人も、箸を止めた。
「辛かったね」
そう言って、優しく抱きしめてくれた。久しぶりに感じた、温もりには栄の胸を借りて泣いた。