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歌とキセキ。

第1章 出会い


赤司side

バスケ部の見学も終わり、ひとりで廊下を歩いているとピアノの音がした。
綺麗なメロディーだ。
でも俺は特に気に止めず、歩き続ける。

赤 「!」

綺麗なメロディーにのせて透き通るような歌声が聞こえてきた。
僕は気になって、音楽室へと足を向けた。
そこにいたのは天使でも降りてきたのではないかと目を疑うほど綺麗な子だった。
幸せそうに歌を歌う彼女の声は俺を一瞬で虜にした。
なにか力をもっている、そんな歌声だ。
歌い終わった彼女は俺に気づいて叫び、ピアノの下に隠れた。
よかった、ほんとの天使じゃないんだな。

赤 「君、名前は?」

「柳澤奏だよ、あなたは?」

柳澤奏か。
ものすごく興味が湧いた。
青峰と同じクラスらしく、俺は少し悔しかった。
彼女を最初に見つけるのは俺がよかったな。
俺は彼女の声が聞きたくてアンコールした。
最初は嫌がっていたが歌ってくれるらしい。

赤 「...」

力強い強い歌だ。
まるで俺を応援してくれているように聞こえた。
メロディーは力強さから変わり、穏やかになってきた。
俺はなぜか昔を思い出してしまった。
大好きな母がなくなり、でも悲しむことも許されず勉強や稽古に没頭した。
父親は厳しかった。
赤司家の自慢の息子になれるようにひたすら頑張って強くなった。
でも俺は...




俺は...強くないんだ





涙が伝うのにも気づかず、歌を聞きたいと言ったことを後悔した。

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