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歌とキセキ。

第1章 出会い


私は音楽室に来ていた。
ピアノの前に立ち、深呼吸をする。

「ふ~」

中学でお世話になるだろうこのピアノに挨拶をした。

「これからよろしくね!」

私はいつもなにかあると音楽室に来て、ピアノをひいては歌った。
楽しくて幸せな時も、辛くて悲しいときも。
私の落ち着ける場所。
放課後に誰もいないってことはクラブなんかで音楽室使わないってことだよね!
超ラッキーじゃん。
うちにはグランドピアノはない。
やっぱりグランドピアノがいいからね。
毎日通っちゃうかも。

「♪~~♪~」

ピアノをひいて、歌を歌う。
私は夢中になりすぎて誰かが音楽室に入ってくるのを気がつかなかった。
歌い終わり、一息つくと人の陰が目に入った。

「きゃーー‼‼」

私は思わずピアノの下にかくれた。

? 「驚かせてすまないね。君の歌が上手くて勝手に入ってきてしまった。」

私に降りかかってきた声はおばけやゾンビの声ではなく優しくて気品のある声だった。

「え、あの、ありがとう。」

? 「君の歌声は不思議だね。」

「え?」

? 「君の歌を聞いていたらすごく落ち着いたよ。」

不思議...
それは彼を見ても思う。
強く、凛々しい目。
でもどこか寂しさがある目だ。

「そんなことないよ、ただ、歌が好きなんだ。」

? 「君、名前は?」

「柳澤奏だよ、あなたは?」

? 「俺は赤司征十郎だ。」

「私は一年5組、よろしくね!」

赤 「青峰と一緒か、俺は1組だよ。」

「青峰くん知ってるの?」

赤 「同じバスケ部に入るみたいだからね。」

今日はバスケ部の人たちにいっぱい出会うな。

赤 「もう一曲聞かせてくれないかい?」

「えー改めて言われると恥ずかしいよ!」

赤 「聞きたいんだ、頼むよ。」

私は何を歌おうか考えた。
赤司くんにピッタリな歌...

「♪~♪~」

私が選んだ歌は力強い歌。
でも、強いってことは苦しいことも悲しいことも乗り越えてきた証。
赤司くんもきっとそう。
あの目は、強いだけじゃない。
歌は力強さからおだやかなメロディーへと変わる。

「どうだった?...え?どうしたの?赤司くん...」

赤司くんの頬には涙が伝っていた。
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