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愛されたい症候群。

第15章 信じてた正義は思い違いな事実だった




「俺は気に入らないからって身内を
虐めようとする奴を勧誘したりしない」


亮の言葉が脳内でループする


「自分を守るために
私を傷つけるのは、やめてください」


霜月の苦しそうな声が
俺の首を絞めていく


「そんなに自分の罪を認めるのが怖いですか」

やめろ、やめてくれ

「嫌ですか。逃げたいですか」

違うんだ、違う
俺は逃げてなんか、

「目を逸らし続ければ済むことだと」

それ以上

「本気で思ってらっしゃるんですか?」

「うるせぇ!うるせぇ!!!」


言葉をかき消すように出た乱暴な俺の悲鳴を
霜月はどんな想いで聞いたんだろうか

それはアイツの目が語っている


憤怒を通り越した、〝憐れみ〟


その目が、俺の信じてた正義が
ただの思い違いな事実だということを
真っ直ぐに突きつけてきた


これ以上逃げられない
逃げちゃいけない


そもそも、逃げていいことなどでは無かった


やっと焦点が合った瞬間に
吹き出た汗で
背中がじんわりと冷たくなる

乾ききった喉のおかげで唾を飲み込む
ことも出来ない


握りしめた拳は
ただ爪で自分の掌を傷つけているだけだと
分かっているのに





やっと顔を上げられたと思ったら
そこに霜月の姿は無かった


…あぁ、そうだ
呆れかえったアイツは帰って行ったんだ



俯いて何も話さない亮

携帯でなにか打ち込んでいる侑士

誰も何も発さない
気まずいような息苦しい空気が
部屋中に蔓延している


俺が何かを言うべきか

…口を開きかけたが、何も言葉は
出てこなかった
そもそも俺が何を言おうとしたんだろう


何も変わらない静けさ


侑士が、持っていた携帯を
自分の横に置いた


「…このまま黙っとっても
しゃあないわなぁ」


聞き慣れている声なのに、思わず身体が跳ねる


俺は何に怯えてるんだ 何が怖いんだ
侑士や亮、違う霜月でもない
じゃありおな?それも違う恐れじゃない


心の底では分かっているくせに
まだ逃げようとしているんだ




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