第12章 あの日からずっと立ち止まったまま
明かりがついている廊下とリビング
聞こえてくるのは
最近人気の俳優と女優がダブル主演という
ドラマのオープニングソングだ
内心の焦りとは裏腹に
脱いだ靴を揃えるくらいは冷静な自分が
なんだか笑えてきた
「(廊下の電気くらい消してよ…)」
こんな小さいな事でも
お金が出ていくことを彼女は知らないのか
無知とは罪である、と
顔も忘れてしまった誰かが言っていた
何故、自分の家で
こんなに緊張しなければならない
何年ぶりだから、なんだ
過去に傷つけられたからなんだ
今も尚、敵意向けられているから
なんだっていうんだ
違う
彼女のは敵意じゃない
私は敵にすらなっていない
なら多分大丈夫、多分
いつも通りでいればいい
「帰ってくるの遅いわね。
遊び歩く相手いたの?アンタに」
偉そうにソファに座りながら
机の上に私物を広げて
さも自分の家かのようにくつろいでいる
この女は…血の繋がっている
私の実の姉である
こんな女と姉妹であるが故に
私の人生は狂ってしまった
「どうやって入ったんですか」
住所どころかどの辺に住んでいるかも
家族には教えていない
私がどこに住んでどう生きようが
あの人たちは少しも興味が無いだろうから
だけど、調べようと思えば
調べられるのがこの人たちなので
家を知られても驚きはしない
「大家さんに姉妹である証拠を見せれば
入れてもらえるに決まってるじゃない」
…家族と言えど誰も入れるな、と
言っておけばよかった
なんて思っても後の祭り
来ないだろうと高を括っていた
自分を殴りたくなる
「そうですか」
「は?ちょっとなに。見てるんだけど」
「耳障りで」
なにが悲しくてコイツといる時に
安っぽいラブシーンなんて
見なくちゃいけないんだ