第12章 あの日からずっと立ち止まったまま
嫌なことは続くというが
いやもうほんとに、なんなんだと
言いたくなるくらいの連続攻撃は辛い
仕事ではつまらないミスを繰り返し
上司に嫌味を言われ
すれ違った顔も名前も知らぬ他人と
ぶつかり舌打ちをされ
リフレッシュに、とショッピングへ
行った帰りに電車は遅延
しかもいつ動くか分からない
ぼーっと電車を待っているより
歩いて帰った方がいいと判断し、
徒歩での帰り道
嫌なことがあった次にはいい事があると
信じたいのだけれど
…まだ続く気がしてならない
だけどこれ以上嫌なことなんて
早々あるわけがない、だろう
*
「はぁ…やっと」
予定よりだいぶ遅くなって
家の近くまで来れた
もうすっかり真っ暗だ
明日が休みで本当に良かった
「…あれ…?」
アパートの下まで着いて
自分の部屋を見上げる、と違和感を感じた
部屋の明かりがついている
消し忘れかとも思ったけど
昼間に出ていって消し忘れるわけない
いや、でも最近いい事なくて
ちょっと抜けてたのかも…
まさか、が頭を過ぎるが
そんなことあるわけがないと頭を振る
だけど少しでも嫌な予感がすれば
平常心ではいられないわけで
階段を駆け上がり、扉に手をかけた
鍵は必ず締めている 当然だ
ドアノブを回して確認も怠らない
筈なのに、ドアノブが回り
扉は開いた
整頓している玄関には
見たことがない白いピンヒールが
脱ぎ捨てられている
「…なんで、」
喉の奥をぎゅっと掴まれているような
吐き気を通り越した不快感
泣きそうになるのを堪えられた私は
あの頃より大人になれたということなのか