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愛されたい症候群。

第2章 気づいた自分に吐き気がした




帰宅ラッシュということもあり
スーツを着た人とよくすれ違う

皆、帰り道を急いでいるようだ
今日も電車は混むだろう 少し気が重い
と言っても3駅くらいだけど


「…あ、」


そういえば冷蔵庫の中に晩御飯になるような
材料が入ってなかった気がする

今日は早めに帰れるし
スーパーに寄り道していった方が良さそう


財布を見て中身を確認する
よし、大丈夫

狙うは安さが安定の最寄りの駅のスーパー

特売は何だったのか
チラシを見てこればよかったと
少しだけ後悔しながら電車に乗った


*

「今日の晩御飯は
魚にしようか肉にしようか…」


並んでいる商品と睨めっこしながら
献立を必死に考える

今日は魚が安いけど一昨日も魚だった
できればお肉が食べたい
でも値引きシール貼られてないし…

出費は出来るだけ抑えたいから迷う


…やはりここは魚でいこう
お肉は給料日にしよう それがいい

せめて、と好物のブリを手に取り
かごの中に入れた

今日は照り焼きにしようかな


「霜月…?」

「はい?」


聞き覚えのある声に苗字を呼ばれ
思わず返事をして振り返る

しかし、無視すればよかったと
全力で後悔した


声の先にいたのは
よく帽子のつばを後ろ向きにして
被っていた、あの人

流石に今は被ってないようだが
そのおかげで少しだけ髪が伸びているのが
よく分かる

それに気づいた自分に吐き気がした


「久しぶり、だな」

「何のご用でしょうか」

「え?いや別に用はないけど」

「では失礼します」


宍戸先輩と話すことなんて何も無い

いや、あの人たちと話すことなんて
私には無い 絶対に無い


もう顔すら見たくないんだから


早歩きでその場を離れる
本当ならもっとゆっくり見たかったけど
宍戸先輩がいるなら
そんな悠長なこと言ってられない


大体なんで氷帝にいた人が
こんな平凡なスーパーに来るんだ
もっと高い所行けよ

、と思ったけど確かあの人は
氷帝では珍しい一般家庭だった

それならば安いスーパーで買い物しても
なんら不思議ではない


そんな所が親しみ安くて
話しやすかったのだけど

今ではそれを恨むばかりだ



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