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愛されたい症候群。

第11章 記憶の引き出し




「これ跡部に伝えるのか」

「俺は確実にクロやと思っとる。
やが、こんだけじゃ言い逃れされても
おかしないし跡部は納得せんやろ」


高校の時だってそれで苦労して
結局自分が諦めたのだ

あの時諦めていなければ、なんて
後悔したところでなんの意味もない


「もっと証拠や。りおなが認めるくらいの
証拠集めて叩きつけるんや。
それしか結婚を止めさせる方法はない」

「結婚しても離婚すればいいんじゃ…」

「離婚するより最初から結婚せぇへん方が
簡単やし、名前に傷もつかんねん」


あの天下の跡部の名に泥を塗るような行為
アイツの家が許すとは思えない

その前に阻止しなければ、必ず


「でもどうやってだよ。
俺たちだけじゃ限界があるだろ」

「俺一人じゃ思いつかへんから呼んだんや。
やけど、これ以上誰かに話すんはあかん」


話せば話しただけ、広がっていく

それは駄目だ
噂に更に尾ひれがついて
跡部の耳に届いてしまうかもしれない


「跡部の話によると
基本、りおなは跡部とおるらしいから
セキュリティもばっちりや」

「探偵頼むってのも難しそうだな」

「りおなのこと知ってる奴で
口が固そうな奴…そんなんいなくね?」


りおなが氷帝に来る前の学校の人間?
いや、全くもって信用できない

中高校生の時のりおなの友達も
散々悪口を言っていたようだし
面白おかしく話を広げられる
可能性が高いから却下


他に誰かいないのか、と記憶の引き出しを
無理矢理にこじ開ける

そしたら遠く忘れていた存在が
片隅にいたのを思い出した


「霜月…慶」


りおなの妹で元マネージャー


彼女は姉を憎み、嫌がらせを繰り返し
結果テニス部どころか氷帝を去っていった


アイツなら俺たちに手を貸すに違いない

人が持つ恨みというものは
簡単には薄れないものだ

それに彼女は執念深くりおなを
追い詰めていた

きっと今でも姉への憎悪は
消えていないに違いない




りおなの本性に気づいておきながら
あの時の彼女の行動は誤解、いや
全くの事実無根だったと

俺の頭には一切過ぎらなかった



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