第11章 記憶の引き出し
本気だった
本気で応援するつもりだった
もう何も言うまい、と思っていた
跡部から結婚の話を聞いた数日後
久しく、向日からメッセージ
何かあったんやろか
そう思いながら開こうとすると
続けて送られてきたのは写真だった
メッセージだけでなく写真までわざわざ
送ってくるのは本当に珍しい
文章を読む前に写真を表示させる
そこには男女が仲睦まじく
手を繋ぎながら歩いている姿が写っていた
「なんなんコレ」
思わず声が出る
これが一体なんだというのか
リア充め、むかつくぞという意味か?
いや向日だってモテるし
わざわざそんなこと言うために
自分にメッセージを送るなんて考えにくい
この男女に何かあるのだろうか
親指と人差し指で拡大し
2人の顔を大きくさせてみる
男の方は全く見覚えがない
イケメンといわれる部類の顔と
いうのは分かるが
身の回りにそんな顔の奴が多すぎて
いたって平凡な顔にも見える
次に女…と画面を少しスライドさせた瞬間
ドキッだかギクッだか
よく分からないが、とにかく嫌な感じがした
きっと俺はもう分かっていたんだろう
この女が誰なのか
さっき、ついさっきだ
応援しようと決めたのに
恐る恐る女の顔を見てみる
指は微かに震えていた
「…はは、笑わしよんなぁ」
いつもと違う雰囲気と化粧は
変装でもしたつもりなのだろうか
拡大したせいで画質は良くないが
はっきりと分かる
写っているのは紛れもなく
りおなだった