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愛されたい症候群。

第10章 まるで歌うような弾んだ声




俺たちは何度も訴えたが無駄

最後には


「人の女を悪く言って楽しいか?」


あまりにも冷たい声に思わず身体が強ばる

それ以上言うのならば
どうなるか分かっているだろうな?

言葉にしなくても伝わる表情と態度


口を閉じることしか出来なかった


跡部には逆らえない俺たちのことを
分かっていて、りおなは俺たちにだけ
あんな態度をとるのだろう

そして跡部がりおなの味方以外に
なり得ないことを理解して


俺が跡部の迫力に黙らされた時
りおなは楽しそうに唇を釣り上げた


「アンタが私にかなうわけないじゃない」


まるで歌うような弾んだ声


ふざけんな、俺はお前よりも長く
アイツといて一緒に戦ってきたんや

お前以下なわけあるか


…そんなことを言ったところで
現実問題、俺の言葉は跡部には届かない

跡部は俺たちよりりおななのだ
それが紛れもない事実として立ちはだかっている



もう、諦めるしかないのか
跡部が幸せならそれでいいんじゃないか

俺がどう言おうがどう思おうが
人の幸せの定義は他人には推し量れない


どうせもう少ししたら別れるさ

跡部のことだ
急に彼女に飽きるかもしれない

そんな小さな希望を持って
俺たちは彼女の横柄さに耐えていた


しかし、高校を卒業しても
大学へ入っても一向に別れる気配が無い

段々と嫌な予感が濃くなっていく


なぁまさか、おい
そんな訳あらへんよな?

天下の跡部が中学生の頃からの恋愛を
ずっと続けるなんてことが


ありえないと言ってくれ



そんな俺の想いは虚しく砕け散り
21の誕生日をすぎた頃、跡部は言った


「そろそろ結婚について
考え出してもいいかもな」


結婚?誰と?
決まってる、わかってる

5年以上前からずっとお前の隣で
薄気味悪く笑っている女だろう


その笑顔がたまらなく可愛いと、綺麗と
思っていた時もあったさ


今では虫唾が走るほど気に食わない





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