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愛されたい症候群。

第10章 まるで歌うような弾んだ声




学校で見かけることもなくなり
聞けば、高校は別の所へ行ったのだと

会わなければ、顔を見なければ
俺の中から霜月 慶という存在は
段々と薄れていった

アイツさえいなければ
もう平和なんだと信じていた


しかし、高校も半ばとなった頃


「なぁ最近さ…」

「分かっとる。アレやろ」

「やっぱお前らも思ってたのか」


少しづつ不穏になってきた俺たちの仲

原因は、りおなと跡部


霜月とのことがあってから
跡部とりおなの仲は急速に縮まり
いつの間にやら2人は学校公認の
カップルとなっていた

美男美女でお似合いで
跡部のファンクラブも
りおなの美貌の前では何の文句も
言えないようだった


勿論、俺たちも祝福していた

あの王様に彼女
それにりおなの良さは誰もが知っていたし
反対する理由もなかった



しかし、俺たちは彼女の本性を
知らなかっただけだったのだ


最初は小さな違和感

笑顔が無かったり冷たい態度のりおな


体調が悪い時もあるだろうし
何か嫌なことがあったのかもしれないと
あまり気にしてはいなかったが

それは日に日に酷くなる一方だった


「岳人ぉジュース買ってきて」

「侑士のノート借りるわね~」

「なんか暇だから亮、面白いことしてよ」


まるで自分がお姫様かのような横柄さ

ほとほと疲れ果てた俺たちは
跡部にどうにかしてくれ、と頼み込んだ

だが跡部は


「あぁ?りおながそんなことする訳ねぇだろ」

「しとるから言うとるんや」

「俺は見たことねぇけどな」


彼女は、跡部の前ではずっと変わらない

いつも通りの姿しか見ていない跡部には
通じるはずもなかった




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