第9章 勝手に自己完結してました?
震える携帯
鳴り響く着信音
表示されたのは知らない番号だ
だけど、私は
この電話相手の名前が分かる気がする
連絡先を交換したけど
財前に言われてすぐ消しちゃったし
でも私が消したところで
向こうは私の番号を持っているわけで
今ずっと無視してたら
後がどうなるか分からない
何回も何回もかけられたらそれこそ迷惑
『…もしもし』
『お、よかった出たわ。
出ぇへんかったらどうしよ思たわ』
『何か御用でしょうか』
相手の顔が見えなかったら
まだ言いたいことが言えるみたい
対面して話す時よりは
比較的落ち着けていることに安堵する
『なんでそんな口調怖いん?
あ、もしかして名乗らんかったで詐欺や
思とる?』
『分かってますよ。…忍足先輩』
二度とあなた達の名前なんて
口にしないと思ってたよ
『分かってんか。
なぁ今、霜月って学生なん?』
『働いてますよ』
『お、そうなんや。休みいつ?』
『基本、土日と祝日ですが』
『ほんなら来週の土曜空けてや』
暇だろ?というニュアンスの言葉
勝手に決めつけるな
私だって忙し…くもないけれど
この人に予定を決められる理由はない
『すみません。既に予定が』
『そーか。ならしゃーないなあ。
今どこに勤めとん?』
『事務職ですよ』
『おん。で、どこ勤めとん?』
思わず顔が歪む
え、なにストーカーなの?
学生の頃いじめっ子だった人達が
ストーカーに変わっちゃったのかな?
タチ悪すぎるだろ
なに犯罪者に変貌してくれてるんだ
…中々裁かれないだけで
いじめっ子も充分犯罪者みたいなものか
『言いたk『まぁ言わんくても
跡部がおるで調べられるんやけどな?』…』
そうだこの人たち側には
あの王様がいるんだった
私なんかがどこで働いているかなんて
すぐにバレるに決まってる
だったら最初から跡部先輩に
聞いたらいいじゃないか
なんでわざわざ私と連絡を交換してまで…
あぁそうだ
考えたって無駄だ
いつだって、この人達の思考なんて
私なんかには読めたことない