第8章 もう泣かないって決めたあの時の誓いは
「バカだよね、すぐに逃げてれば
こんなことにはならなかったのに」
「逃げ場が無けりゃ逃げられんやろ」
「まぁね。居場所も逃げ場もない。
…何故か急にね、馬鹿馬鹿しくなったの」
何思って何のために私は頑張ってるのか
何の意味も持たず何も生み出さないのに
そんな時、両親の耳に
私が姉に嫌がらせをしていることが
入ったらしい
姉のことが大好きなあの人達は
それはもう怒り狂って
殺されるかと思うくらい殴られた
そして強制的に部活も学校も辞めさせられ
寮がある私立の女子校に転校
大会の前日に私は氷帝から姿を消したのだ
「エスカレーター式だったから
そのまま高校にも進んで、すぐ就職。
ほぼ勘当されてるから今は一人暮らしなの」
出来の悪い妹が愛されてる姉を
いじめていた、なんて家にとっては汚点
だから大っぴらに縁をきることも
できなかったようで
自立してる、という名目で私は家を
追い出された
「つまんない話だったでしょ」
何も言わない財前に少し申し訳なくなる
こんな話、聞いたって後味悪いし
楽しい話ではない
誰にも話したことなかったんだけどなぁ
「もう、解放されたんやろ」
「え?まぁ一応…ぁ」
「は?」
「ほら、さっき会ったでしょ忍足先輩」
宍戸先輩に会ったり忍足先輩に会ったり
…ずっと嫌な予感がしてるのは
もう無視出来ない
また何かある気がしてならないんだ
「電話番号交換しちゃったし
…ほんと、今更なんなんだろ」
彼らの声すら私にはトラウマで
もし全員と会うなんてことになったら
それこそ発狂しかねない
けど多分私は逃げたりなんてできくて
従ってしまうんだろう
恐怖の支配力って凄まじい
「怖いんか」
「そりゃそうだよ。怖い」
「霜月りおなとは会っとんのか」
「全然。数年は顔も見てない」
「ふーん…」
「…あ、そろそろ時間やばいかも」
話してるのに夢中だったけど
時計を見れば結構いい時間
そろそろ帰らないと
家のことちゃんと出来てない
「出よっか。…ちょ、伝票」
「知らん」
「いや知らんって。
私が奢るって言って入ったし」
「知らん」
結局奢られてしまった
私、社会人なんですけども