第8章 もう泣かないって決めたあの時の誓いは
愛される姉は社交的で
毎日が楽しそうで幸せそうだった
反対に私はいつも暗く
態度も鬱々としていたに違いない
そんな私が中学に入って
テニス部のマネージャーになって
多少なりとも、明るくなったのかもしれない
姉は許せないのだ
自分より愛されない私が幸せなことが
だから彼女は氷帝に転校してきた
両親には適当に理由を述べて
見目が良くて、他人には笑顔を振りまく姉は
すぐに周りに溶け込んだ
そして、私がテニス部のマネージャーを
していることを知り
マネージャーは選手の推薦が無いと
入部できないと分かると
私に声をかけてきた
宍戸先輩の推薦のおかげや
真面目な働きで選手の人達からは
1年かけて多少の信頼は築けた
だから、私が薦める人…しかも姉なら簡単に
入れるだろう、と
その時にもう気づいてしまった
私の今の幸せは壊される
気づいた筈なのに、逃げなかったのは
少しでも期待していたんだ
あの人達ならもしかしたら
姉ではなく私を信じてくれるかもしれない
「そんな期待は粉々に打ち砕かれたけどね」
「誰もお前の味方にならへんかったんか」
「うん。だーれも」
最初の方はそれでも、と
諦めの悪い私は縋るような思いで
マネージャーを続けた
きっと誰かが私を認めてくれる
そんな夢を見ながら
永遠にこない〝いつか〟を追っていた
「だけどやっぱり無駄。
日に日に酷くなっていく暴力や罵倒の言葉に
耐えられるほど私は強くなかった」
いっそ死のうかとも思ったが
死んでしまっては誰にも何も残らない
それに私の死さえも姉は利用し
彼女に都合よく事が進んでいくんだろう
それだけは嫌だった
「〝人気者の姉に陰で嫌がらせをしている
最低な嫌われ者の妹〟になったけど
マネージャーはやめなかった。
だけど跡部先輩から言われたの」
「氷帝の部長か。…なんて言われたん」
「そうそう。
「うちのマネージャーはりおなだけだから
他はマネージャーと認めない」って。
私は部活中、選手の目に触れることは
許されなかった。
だから財前にも会わなかったんだよ」
他校との試合の時に
外に出るなんてもってのほか
他の学校の人達も
氷帝のマネージャーが2人いたなんて
絶対知らないだろう