第5章 今日はあんみつ食べに来たけど
あの合同練習の後も
氷帝とは何度か合同練習をしたり
試合をしたりすることはあったが
アイツを見たのはあの日1回きり
たったの1度も〝また〟は無かった
「なんで財前ってすぐ別れるん?」
「さぁ知らん」
「モテんのに勿体ないわ」
月日は残酷なまでに過ぎていく
中学、高校となるまで
好きだと言ってくる女は何人かいたから
テキトーに付き合っては
テキトーに別れる、を繰り返していた
束縛がウザイとか重くてキモイとか
色々理由もあったが
1番の理由は頭にずっと居るから
言わずもがなあの女の子
どうしても他の女を大切にしようとか
好きだとは思えなかった
あの一瞬で一目惚れ?俺が?
恋愛なんて馬鹿馬鹿しいと思っていたのに
でもきっとこれだけ忘れられないのは
…好きになってしまったんだろう
認めたはいいけど
探すこともできない
出来るならもう1回、
今度は会って話したい
自分の姿を覚えてもらいたい
そんなこと出来るはずないのに
そう思い始めた時
俺はもう大学生になってしまった
テニスを続けていたのが幸いしたのか
特に沢山勉強もしてないが
近くの体育大学に無事入学
先輩だった白石部長や謙也さんもいて
何もなく平和な大学生活だ
サークルは当然のごとく硬式テニス
体育大学ということもあってか
かなり本格的にやっていて
県外に遠征というのも普通らしい
面倒くさがりの俺にとっては
ちょっと…いや、まぁまぁだるいもんで
今回もわざわざ東京まで遠征という
無駄に時間をかけていくスタイル
しかもついた瞬間自由行動だと
なにしに東京まで行くんだと本気で聞きたい
「着いたで東京ぉー!!!」
「今まで何回も来てますやん」
「来る度にワクワクするもんやんなぁ白石!」
「せやな。とりあえずスカイツリー行こか」
本当になにしに来たんだ 観光か
「俺てきとーにその辺いるんで」
「財前来んのか?」
「つまらんやっちゃなー!」
「財前も行きたいとこあるんやろ。
じゃあ2時にここ集合でええか」
「うっす。
…ナントカと煙は高い所が好き言いますけど
ほんまなんすね」
「はー!?誰が煙やねん!!」
「…もーいいっす」
「謙也…バカにされとんの気づけや」