第3章 厨二病みたいね
「私を殴ったり貶すことも
仲間を叱咤することもしない。
ずっと蚊帳の外でしたね」
「…っ、」
「別に庇って欲しかったなんて思って
いませんし、特に恨んでもいません」
その言葉があまりにも意外だったのか
宍戸先輩は困惑の表情を浮かべた
これは事実
確かに会いたくもなかったし話したくも
なかったけど恨んだり憎んだりはしていない
この人は私に手をあげることも
暴言を吐くことも無かった
他の部員が気づかないところで
仕事をしていた時にお礼を言ってくれたり
してくれたことだってあったし
私が作ったドリンクだと知っても
その場で流したりせずに飲んでくれたり
できるだけ〝普通に〟接しようと
してくれていた
認めたくないけど
私にとって唯一の助けだった
ただこの人は
仲間を何よりも大切にするから
部員同士の争いを恐れていたんだ、と思う
その結果私という生贄を選んだんだろう
生贄とか厨二病みたいね笑える
「もういいですか?帰りたいので」
ただ、今こうやって引き止められるのは
迷惑以外の何者でもない
宍戸先輩がここにいるのなら
他の人が来てもおかしくないから
ほんとに流石に耐えられなくなるわ
「えっと…そ、そうだ!
荷物、重いだろ!?送ってく」
「結構です」
「も、もう夜だし女の子1人じゃ」
「何かあっても平気です。
暴力には慣れましたので」
なんて嫌味だろう
自分でも性格が悪いのはよく分かってる
だけど、もう近づいて欲しくない
私に対して罪悪感だとか
そんな気持ちがあるからここに立って
私と話そうとしているんだろうが
そんな気持ちがあるなら
私と関わらないでほしい
私の知らないところで
勝手にやっていてくれ
幸せだろうが不幸せだろうが
そんなの私には関係がない
すれ違いざまに
ごめん、と言われた気がしたけど
それこそ空耳で幻聴だ