第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
翌日、城のみんなが引き止める中、ハートの海賊団は船を出すことになった。
「本当にもう行くのか? もう少しゆるりとしていってもいいではないか。」
まだなんの恩も返していないのに…とネプチューン自ら言うが、ローの決断は変わらない。
「悪いが先を急ぐ。それに、別にお前らに恩を売った気はねェ。」
ローはモモに付き合っただけだし、モモのはただのお節介な職業病だ。
「うーむ…。しかしそれでは、我らの気がすまないんじゃもん。」
それでも引き下がらないネプチューンに、コハクが話に割り込んだ。
「いいって言ってんじゃん、おっさん。オレらが好きでしたことなんだから。…なぁ、母さん。」
「……えッ」
急に話を振られ、モモは過剰に反応してしまう。
原因はもちろん、昨夜のことだ。
あれからローとはろくに話をしていない。
普通にしなければとは思うけど、なんだか変に意識してしまうのだ。
(そんな…、子供じゃないんだから。)
こんなことで挙動不審になるなんて、まるで初めての恋愛みたい。
…実際、ローが初恋なのだけど。
とはいえ、モモはもう23歳。
こんなことで気まずくなっていられない。
気を取り直して会話に参加する。
「…ええ、本当に気にしないでください。昨日の宴は楽しかったですし、食料やお酒もこんなに分けてもらって、逆に悪いくらいです。」
モモとしては、料理長にレシピを教えてもらえたことが1番の収穫だ。
「モモ様…ッ、本当にもう行ってしまわれるんですか?」
しらほしにそう言われると後ろ髪を引かれる気分になるが、それに負けてはいけない。
だって、これは“別れ”ではないのだから。
「うん、もう行くわ。いつまでも新世界の入口にいられないもの。それに早くしらほしの友達にも会ってみたいわ。」
しらほしの友達、麦わらの海賊団はこの海の先にいる。
「悲しい顔をしないで。今度はあなたが会いに来てくれるのでしょう?」
広い広い地上の世界に、今度はしらほしが来たらいい。
そして一緒に、本物の森に出かけよう。
今度はわたしが、地上の植物を教えてあげるわ。
そう、約束するよ。