第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
モモが城の中庭にいることは、ローに聞かずとも知っていた。
そして、2人がなにを話していたのかも知っている。
あの場に居合わせていたのは、なにも しらほしだけではなかったのだ。
でも、しらほしと違ってコハクは話の内容に驚くことはなかった。
なぜなら、ローがモモを想っている。
そんなことはとっくに知っていたから。
そして、モモの返答も予想していたものだった。
きっとそう言うだろうな、と思っていた。
でも、本当はモモがローをどういうふうに想っているかも、コハクはよく理解していた。
けれど それを今、自分がローに伝えることはできない。
それはモモがローに伝えなければいけないことだから。
だから、自分がローに言えることは、ただひとつ。
「オレさ、医者になりたいんだよね。」
言いたいことがある。
そんなふうに言われたからなにかと思ったのに、唐突な告白にローは目を丸くする。
「なにを今さら言ってんだ。そんなことは知っている。」
だからコハクはローの船に乗ることになったのだ。
「まぁね。でもさ、あの時は成り行きだっただろ。」
たまたま、ローはシルフガーデンに来た。
たまたま、コハクは医者になりたかった。
そしてたまたま、ローはモモの願いを叶えてやりたくて、モモはコハクの乗船を願った。
すべては偶然だったのだ。
あの日、シルフガーデンに来たのがローでなければ、コハクは今も島にいて、モモはメルディアに自分を託そうと考えていただろう。
コハクがローの船に乗ったのは、ローがモモを連れて行くと言ったから。
そうじゃなきゃ、きっと自分も首を縦には振らなかった。
あの時は、単なる成り行き。
「でも今は、オレが乗った船がこの船で良かったと思う。…ローのもとで医者になりたいって思うよ。」
だから…。