第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
その頃、モモと別れたローは宴に戻る気にはとてもなれず、王城の裏に停泊している海賊船に戻っていた。
とは言っても、自室に戻るわけでもなく、デッキの上で ただぼんやりと海の様子を眺めているだけだ。
『ごめんなさい。あなたに恋愛感情は持てないの。』
さっきから、想いを告げたときのモモの返答が繰り返し頭に響く。
本当は、彼女に返答を求めるはずじゃなかった。
自分の気持ちを告げるだけのつもりだったのだ。
それなのに、つい期待をしてしまったのだ。
モモが想いを返してくれるのではないかと。
自分たちの間には、それなりの絆があったと思っていたから。
けれど、彼女はハッキリと言った。
『あの人だけを愛しているわ。』
少し考えれば当然のこと。
モモはコハクの父親を愛しながら、ずっとあの島に閉じこもっていたのだから。
こんな少しの時間に、彼女の想いがこちらに向くはずがない。
モモが自分に向けていると思っていた好意は、尊敬という名のものだった。
そんなの、わかっていた。
わかっていたはずなのに…。
思いがけず受けたショックは大きかった。
(…ったく。女々しいこと、この上ねェな。)
たかだか、女にフられただけだ。
それも、仲間としての関係が終わるわけではない。
それなのに、こんなところで落ち込んでいるなんて情けない話だ。
しかし、次にモモと顔を合わせる時には、普段通りにしなくてはいけない。
そうでなくてはモモが気にしてしまう。
さて、今ごろモモは宴に戻り、仲間たちと合流している頃だろう。
そろそろ自分も戻らなければ。
コツ、コツ…。
そう思った矢先に、誰かが船にやってくる気配がした。
誰かが心配して探しに来てしまったのか。
けれど、そんな相手はモモくらいなもの。
正直、今はまだ普段通りに振る舞える自信がない。
どうしようかと考えてあぐねていたところで、船に上がった人物はローの名を呼んだ。
「ロー。」