第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
どうしてモモは、ローに恋愛感情を持てないなんて嘘を吐いたのだろう。
しらほしにはローのことを“初めて好きになった相手”とまで言ったのに、その気持ちを隠す理由はなんなのか。
自分が踏み込んでいい領域ではないことを知りながらも、モモに尋ねずにいられない。
「どうしてなのですか、モモ様…!」
「……。」
しらほしの問いかけを受けながら、モモはそっと己の胸を押さえた。
ローにもう一度、好きになってもらえた。
嬉しくて嬉しくて仕方がないし、今すぐ「わたしも好き!」と告白して、その腕に飛び込みたかった。
でも、そんなことはできない。
だって、わたしは…。
「…わたし、昔ね、ローから大切なモノを奪ったの。」
「え…?」
ポツリと呟かれたモモの言葉に、しらほしは目を丸くした。
けれど そんな彼女に構わず、モモは話を続ける。
まるで懺悔をするように。
「ローは覚えていないけど、わたしはローの一番大切にしてたモノを奪ったのよ。」
「覚えていないって…。」
そんなこと、あるものだろうか。
一番大切なモノなのに、失ったことを覚えていないはずがない。
モモの話は、矛盾しているように思えた。
「それは、いったいなんなのです?」
「…言えないわ。」
言えない、誰にも…。
でも、間違いなくローにとって一番大切なモノだったのだ。
「わたしはローにひどいことをした。これは紛れもない事実よ。そんなわたしが、ローの隣に立てるわけがないでしょう。」
モモは罪を犯したのだ。
決して許されない罪。
それなのに、それを忘れて再びのうのうとローに愛されることなどできない。
例え誰が許しても、モモ自身が許さない。
どんなに今が幸せでも、彼を想っても、彼の特別になりたいと願っても、モモにはローの想いを受け入れる資格など ありはしないのだ。