第8章 嫉妬
「船長! 起きてください、大変です…ッ」
「……うるせェ。」
頭がガンガンする。
昨夜、帰って来たローに対してモモは怒りもせず、落ち込みもしていなかった。
ローが誰となにをしてても、興味はない。
嫉妬すらしない彼女が、そんなふうに言っている気がして苛ついた。
『なにか言いたいことはねェのか』
メルディアのことをなにも聞かないのか。
あの後、どうなったのか気にならないのか。
聞けよ。
『なにかって…?』
思い浮かばない、といったふうの彼女に、怒りが湧いた。
それをぶつけようと、唇を奪おうとしたとき、力いっぱい抵抗された。
『わたしに、触らないで。』
歪んだ笑顔で、口から発せられたのは、拒絶の言葉。
わかっていたさ。
ローが想うように、モモが自分を想っていないこと。
船長である自分の命令。
モモがそれに縛られてるだけってこと。
悪いな。それでも、手離してやれねェ。
昨夜はそれから浴びるように酒を飲んだ。
「船長、モモが、モモが大変なんですって!」
バチリと目を開け、覚醒した。
「モモが…、なんだって?」
「モモがメル姐さんに連れて行かれちゃったんですよ!」
「メルディアに…?」
想像していた危機とは違う。
メルディアがモモをどうこうするとは思えないが、なんのために…。
「どこへ行ったかわかるか?」
「いえ…。すみません。」
「…探すぞ。」
二日酔いしている場合ではない。
メルディアは少し強引な女だ。
彼女に付き合わされて、モモが嫌な思いをする可能性が高い。
さっさと連れ戻してやらないと…。
照りつける日差しに目を焼きながら、ローは船を降りた。