第8章 嫉妬
「じゃあ、やっぱり、セクシーな服でも着て仲直りしなさいよ。」
「なんでそうなるんですか…。無理です。」
そんな胸やら足やら出た服、着れない。
「あなたねぇ、せっかく元はいいんだから、オシャレしなさいよ。恋人のために綺麗になろうって気はないの?」
「恋人って誰のことです?」
「誰って…、ローに決まってるじゃない。」
とんだ誤解だ。
「わたしとローは、そんなんじゃないです。」
「……え?」
「だから、わたしはただの薬剤師ですよ。」
それ以上でも以下でもない。
「ローはわたしに、そんな気持ち持ってないですよ。」
そして、わたしも…。
「……嘘でしょう?」
「いえ、ほんとに。」
メルディアはどこでそんな勘違いをしてしまったのか。
(……嘘でしょう?)
メルディアはもう一度、心の中で呟いた。
ローがモモを見る目は、久しぶりに会ったメルディアからでもわかるほど、愛情に溢れていた。
言葉の端々からも、モモへの気持ちが窺える。
(この子、あんなに分かりやすいのに、なんっにも気づかないの!?)
それに、ローの態度から察するに、彼はモモを恋人だと認識しているようだった。
きっとまた、肝心な言葉を言わないで、伝わってるとでも思っているのだ。
「なにそれ、すっごい面白い!」
「……は?」
「うんうん、いいわ。なんかキュンキュンきちゃう!」
「キュ、キュンキュン…?」
メルディアの言ってることは、さっきからよくわからない。
「んふ、じゃあ、あなた、今はフリーってことになるのね。」
「そうなりますね。」
今は、もなにも恋人なんていたことがない。
「じゃ、合コンしましょ。合コン!」
「えッ!?」
メルディアは良い考えだ、と手を叩いた。
「無理! わたし、そういうのほんとに…!」
「じゃあ、まずはオシャレしなきゃ! ちょっと、店員さーん!」
「メ、メル! 話を聞いて…ッ」
強引な彼女が、話を聞いてくれることはついにない。