第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「あら。どうしたの、ロー。」
きっとモモを探しに来てくれたのだろうに、こんな質問をする自分は意地が悪いだろうか。
「……お前こそ、こんなところでなにしてる。」
案の定、微妙な沈黙の後に 彼は質問に質問で返してきた。
その微妙な間が、自分を心配していたのだと暗に言っているのがわかる。
「ちょっと休憩してたのよ。今日は本当にいろいろあったから。」
深海に潜って洞窟探検。
過去の夢を見たり、しらほしと共に唄ったり。
そして、ローがいなくなるかもしれないという恐怖も味わった。
それを言えば、ローの方こそいろいろあっただろうに、彼の顔には疲れの色ひとつ浮かんでいない。
さすがは体力オバケ…。
「でも、そろそろ戻ろうと思っていたところなの。」
一緒に戻ろうと視線で訴えかけるが、予想に反してローは「イヤ…」と小さく呟いた。
「少し話がある…。」
「あ、うん…。」
そういえば、デンの家でもそんなことを言っていたっけ。
忘れたわけではないけど、今まで思い出せなかったのは、無意識のうちに話の内容に怯えていたということに他ならない。
でも、もう観念して聞いてあげなくては。
「えっと、なに?」
なにを聞いても動揺しないように、なるべく心を落ち着かせて尋ねた。
デンの家ではなかなか言葉が出ず、話し出すのに時間がかかったローだったが、今回の切り出し方は早かった。
少し時間をおいたことによって覚悟が決まったようだ。
「…好きだ。」
「……うん?」
しっかり話を聞くつもりでいたのに、言っている意味がわからなくて首を傾げる。
好きって、なにが?
ぱちくりと目を瞬かせるモモを見て、言いたいことがまるで通じていないことを察したのだろう。
ローは渋面を作る。
そういえば、コイツは鈍い女だった。
もっとハッキリ言わないと、きっと伝わらない。
ローとしては、この言葉を発するだけで、身がよじれそうな思いなのに。
ちゃんと伝わるように、今度こそ…。
「お前が、好きだ。」