第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
実はというと、コハクはもちろんモモもこんなに大規模な宴をするのは初めてだった。
ハートの海賊団でも時折 宴と称した酒盛りは開催されるが、あくまで小規模。
なにせクルーの人数は、ローを含めても7人だから。
目の前には食べきれるのか? と心配になるほどのご馳走の山。
美しい人魚たちがくるくると舞う踊りは目を楽しませ、長きに渡って国を支え続けた文官の話はとても興味深い。
「わ、このお菓子おいしい!」
しらほしからぜひ食べてくれと差し出された魚人島のお菓子は、今まで食べたどんなお菓子よりもおいしい。
「そうでございましょう? わが国で作ったお菓子は世界一なのです!」
きっと地上のお菓子を食べたこともないだろうに、えっへんと胸を張るしらほしが可愛らしいかった。
けれど、世界一と言われても頷けるほどおいしいのは確かだ。
このとろけるような口どけは、いったいどうやって作るんだろう。
モモは料理人じゃないけれど、一船のキッチンを任されている身としてムズムズと探求心が疼く。
「ねえ、これって作り方とか教えてもらえるのかしら…。」
もし船で作れたら、きっとみんな喜ぶ。
「ええっと、どうでしょう。お菓子はいつも工場で作っているのですが…。あ、でも城の料理長であれば知っているはずです。」
ダメもとで尋ねてみたけれど、さすがに王女ともなると料理はしないのだろう。
わからなくて首を傾げている。
「そう、じゃあちょっと聞いてこようかな。」
周りを見ればすでに酒盛りムードになっており、お酒が飲めない自分が席を外すにはちょうどいい。
そそくさと立ち上がったモモは、城のキッチンへと足を向けた。
その後ろ姿に投げかけられたローの視線には気がつかないまま…。