第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「さぁさ、早く城へ入るんじゃもん。宴の準備ができているぞ。」
「あ、本当にそんなお気遣いなく…。」
勢いに押されてつい王城まで来てしまったが、宴なんてとんでもなかった。
ただでさえ自分のワガママでみんなの足を止めているのに、さらに出発を遅らせるわけにいかない。
「いいんじゃねーの、宴くらい。せっかく準備してくれてるのにさ。」
どうやって失礼のないように辞退しようかと考えあぐねているところで、コハクに裏切りとも思える発言をされ、思わず固まる。
「そうですわ、モモ様。少しくらいいいではありませんか! もうお別れしなくてはいけないなんて寂しすぎます…。」
しらほしに悲しげに言われては、もう頷くしかなくなってしまうではないか。
「……ッ」
空気が読めてないのか、はたまた読んであえての発言なのか知らないが、半ば八つ当たり気味にコハクをじとりと見つめた。
「え、だって魚人島の宴って興味あるじゃん。」
モモの視線を受けてなお、あっけらかんと言ったところを見ると、どうやら後者であったようだ。
(もう、もう…!)
身内に潜む とんだ伏兵のせいで、二の句を告げなくなってしまう。
その様子を後ろで見ていたローは、ひっそりとため息を吐く。
(てめェのガキに翻弄されてどうする…。)
ここぞというときはとても強いモモだが、普段の彼女は呆れるくらい頼りない。
まあ、だからこそ目が離せないわけなのだが。
「俺たちは先を急ぐ。ちんたらメシを食ってる場合じゃねェんだが。」
このままでは何日も拘束されそうな気がして、仕方なく口を挟む。
「これこれ、堅いことを言うでない。おぬしの仲間はとっくに城の中にいるぞ。」
「……は?」
なんだって?
「気の短いヤツらじゃ。待てと言っておるのに、先に宴を始めてしまっておる。」
言われてみれば、開け放たれた城の奥からは聞き慣れた騒ぎ声が…。
「……ハァ。」
自由を好む船長の船には、自由気ままなクルーが集う。
自分が選んだとはいえ、そんな船長の気苦労は絶えなかった。