第8章 嫉妬
「ねえ、モモ。これはどうかしら?」
「お似合いです。」
むしろなんでも似合う。
「違うわよ、あなたにどうかって言う話!」
「えぇ! そんな露出する服、無理です…ッ」
両手を突っぱねて否定する。
「なに言ってんの、若いのに! そうねぇ、やっぱりアクセサリーはローに直接買ってもらうのが良いだろうし、ちょっと派手な服にしましょうよ。」
「メルディアさん、わたしの話、聞いてます…?」
「その呼び方も嫌ね。これからはメルって呼びなさいよ。」
「そんな、会って間もない年上の方を呼び捨てに出来ませんよ。」
仲間たちは別だけど、そこは礼儀をわきまえるべきだ。
「ふうん…、そう。じゃ、呼ばないとキスするわよ。」
「は…?」
スルリと白い腕が腰に回り、赤く艶めかしい唇が近づいてくる。
「ちょ…ッ、ちょっと、メルディアさん!…メ、メル!」
「うふ、良くできました。」
近づいた唇はチュッと頬に落ちた。
柔らかなキスを受けた頬を手で押さえながら、モモはドッと疲れた顔をした。
(…その唇がローに触れたのかな。)
ついそんなふうに思い、心がモヤモヤしたけど、昨夜より嫌な気分にはならなかった。
たぶん、メルディアという女性をモモが少し好きになったから。
彼女の強引さと、猫のような気まぐれさは嫌いじゃなかった。
(メルならきっと、ローの隣に--。)
相応しい…。
チクリと痛みが胸を刺した。
「言っておくけど私、もうローとはなんでもないわよ。」
「…えッ!?」
心を読んだかのような発言に心臓が飛び出るかと思った。
ついでにその内容面にも。
「昔の女っていうのは本当だけど、ほんとそれだけ。昨日も振られたしね。」
「そ、そうなの…?」
「ええ、昨日は本当に飲んだだけ。あの男、見る目無いわね。」
(…だとしたら、わたし、ローにヒドイことしちゃったんじゃ。)
「うふ、その様子じゃ、ケンカでもしたんでしょう。」
「そんなんじゃ…。」
モモが勝手に暴言を吐いただけ。