第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
正直言えば、自分の強さには自信があった。
自分ひとりなら多少の危機にも対応できるし、思い切った決断もできる。
それ相応の覚悟もあると思っていた。
しかし、覚悟とはなんだろう。
信念を貫き通す覚悟。
差し違えてもドフラミンゴを倒す覚悟。
今までローは、その目的のためだけに動いていたと言っても過言ではない。
けれど、その目的はすでに達成されている。
では、今のローの覚悟とは?
『おれは、仲間がいねぇとなんにもできない自信があるなぁ。』
いつだか、麦わら屋がそんなことを言っていた。
船長が仲間に引っ張られてどうする。
もっと自立しろよ。
それを聞いた時はそんなふうに思ったものだ。
しかし、ドフラミンゴとの戦いが終わり一段落ついた頃、ふと目を瞑ってみると瞼の下に描かれたのは仲間たちの姿だった。
今自分に必要なのは、仲間たちと生きる覚悟。
そして…。
隣に座る、ひとりの女。
自分が初めて恋しいと、好きだと想ったひと。
彼女を守り抜く覚悟。
彼女を愛し抜く覚悟。
必要なものは、ただそれだけ。
思い出すのは、光満ちる海の中、意識が沈んでゆく瞬間。
“モモに好きと伝えれば良かった…。”
そんな後悔が胸を占めた。
そう、ここは新世界。
いつなにが起きるとも知れないのに、自分はなにを悠長に構えていたのだろう。
幼き頃、ローはコラソンに“愛している”と伝えられなかった。
その後悔を忘れたわけではなかったのに。
だから決めたのだ。
モモに想いを伝えようと。
握りしめた彼女の手からは、温かな体温が伝わってくる。
けれどそんな体温を忘れてしまうくらい、ローの胸に宿る想いは熱い。
どうしたらこの想いを、モモに伝えることができるだろうか。
26年の時を生きておきながら、初めての経験がローを悩ませる。
想いを口にすることが、こんなにも難しいことだなんて知らなかった。
奇妙な沈黙が続いてしまうとわかっていながらも、なかなか口を開くことができない。