第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
その後、デンの家に戻った一同は、束の間の休息をとった。
風呂を借りたモモは、リビングで熱いお茶を啜っていた。
「ふぅ…。」
ようやくひと息つけたものの、泣きはらした目が重たい。
ローが目を覚まして安心したとはいえ、いくらなんでも泣きじゃくりすぎた。
思わずローに謝らせてしまうほどに。
本当は、悪いのはモモだ。
ワガママを言って海底洞窟になんか行ったから。
その結果、陽樹 イブの光を取り戻すことができ、後悔はしてないけど、それにしても迷惑をかけすぎた。
もしあの時、ローが目を覚まさなかったら…?
そう想像するだけで、凄まじい恐怖がモモを襲う。
ブルリと震えが走り、自分を落ち着かせようと身体をさする。
「…まだ、寒ィのか?」
「……!」
背中からかけられた声に驚き振り向くと、同じく風呂を借りたローがリビングに入ってきたところだった。
「ううん…。ローこそ、そんな格好でいると風邪ひくよ。」
濡れた髪をタオルで拭うローは、上半身になにも着ていない。
引き締まった逞しい肉体に、派手なタトゥーがよく映える。
昔は見慣れた身体だったのに、今は目のやり場に困って視線を外す。
そんなモモの気など知らないローは、椅子をガタリと引いて、当たり前のように隣に腰を下ろす。
「……。」
しばらく沈黙が落ち、堪えきれなくなったモモは話題を探す。
「えっと…。お茶、飲む?」
「イヤ…。」
てっきり頷くと思っていたのに、あっさり断られ、仕方なく浮かしかけた腰を戻す。
「……。」
おかしいな。
どうしてこんなに気まずいのだろう。
たぶん、原因はローだ。
隣に座るくせに、ずっとなにかを考えるように黙り込み、話しかけにくい雰囲気を作っているのだ。
(わたし、怒らせちゃったのかな。)
考えてみれば当然である。
モモのせいで、ローは命を落としていたかもしれないのだから。
消沈した思いで窓の外に目を向ける。
外は陽樹 イブがすっかり輝きを取り戻し、燦々と太陽光が降り注ぐ。
それでも、この国を守れて良かったと思うのだ。