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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第41章 消えた灯りと人魚姫の歌




(…ロー。)

名前を呼ばれた。


(ねえ、ロー。)

ひどく悲しげな声。

彼女が悲しそうにすると、自分が悲しいわけではないのに、胸が苦しくなった。

パタパタと顔に温かい雫が落ちる。

頬をつたって唇に触れたソレは、甘くて塩辛い。

これは、涙…?


(もう、置いてかないで…ッ)


涙に震えた悲痛な声に、ハッとして目を開ける。

すると、目の前にはボロボロと雫を溢れさす金緑色の瞳。

無意識に手が動き、零れる涙を拭った。

「…ッ、ろぉ…!」

嗚咽がひどすぎて舌が回らない彼女に、思わず「フッ」と笑みが零れた。

「……ッ」

そんなローの笑みにモモはぐしゃりと顔を歪め、込み上げる涙を止められず、両手で覆ってしまう。

「…オイ。」

表情が見えなくなると、とたんに不安になり、ゆっくりと身を起こした。

瞬間、肺から咽せるような咳が込み上げる。

「ゲホッ、ゴホ…ッ」

「……!」

弾かれるように顔を上げたモモは、急いで背中をさする。

そんなことをすれば、濡れてしまうと止めようとするが、よく見ればモモの身体もびしょ濡れだ。


「ロー君…! ああ、良かった、目を覚ましたんだね。」

後ろからデンが駆けてきた。

「モモ君がキミのことを見つけた時は、どうなることかと思ったけど、無事で良かった!」

モモが俺を見つけた…?

ということは、意識が途切れる前、ローが見た人影はモモだったということになる。

なんて危険なことを…。

感謝よりも先に、自ら危険な状況へ飛び込んだ彼女へ怒りが募ったが、今も肩を震わせてローの背をさするモモの様子に、そんな想いも消え去る。


いったい、どれだけ心配させたことだろう。

もしも逆の立場なら、気が狂うかもしれない。

「モモ、悪かった…。」

めったにしない反省をしてモモの頬に触れると、赤く上気した頬は思いのほか冷たかった。

「……ぐす。」

コクリと頷いた瞳からは、新たな涙が零れてローの指を濡らす。

モモの涙を止めてやりたいが、流す涙の数だけ、彼女が自分を想ってくれているのだと思うと、状況も忘れて嬉しくなってしまう。

「…悪かったよ。」

もう一度そう言うと、瞳を上げたモモは少しだけ笑んだ。



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