第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「モモ様…ッ。いけません、もう上がりましょう!」
ローの帰りを待つモモは、その場を離れようとしないが、洞窟から溢れ出す光はますます強さを増し、これ以上ここにいるのは危険だ。
「先に行って…! ローが出てきたら、すぐに上がるから!」
「……ッ」
でも、ローが無事に出てくるとは限らない。
むしろ、あの閃光の中で動くのは難しいだろう。
もしかしたら、ローはもう…。
そんな考えがよぎるけど、しらほしにはそんな残酷な結末をモモに告げることができない。
けれど、ここに留まっているのは、そろそろ本当に危ない。
「モモ様、ごめんなさい。…メガロ!」
「シャシャー!」
しらほしの呼びかけに応えたメガロは、モモの身体を背に乗せて、無理やり浮上する。
「あッ、待って…! わたしはまだ…!」
ローの無事を確認できなきゃ、ここを動きたくない。
「モモ様になにかあっては、ロー様が悲しまれます!」
必死に宥めなれるが、そんなこと耳に入らなかった。
知らないよ、そんなの。
ロー、もしあなたになにかあったら、わたしは生きていけない。
一度は決意した永遠の別れ。
でもローは、再びモモの前に現れた。
モモはローに、二度恋をした。
けれど、二度の別れは耐えなれない。
それが死別なら、なおさら。
その瞬間、モモの世界は真っ黒に染まることだろう。
眩しさを堪え、縋るように洞窟に目を向ける。
すると溢れる光の中から人影がポツリと見えてきた。
「……ッ!」
ローだ。
間違いない!
叫びだしたくなる衝動を抑え、モモはメガロの背から、シャボンの中から飛び出した。
昔から泳ぎは得意だ。
言ったでしょ、あなたが溺れたら、わたしが助けてあげるって!
筋肉の組織が引きちぎれてもいい。
1秒でも早く、あなたのもとへ…!
「……!」
洞窟から飛び出てきたのは、やはりローだった。
しかし彼はシャボンを纏っていない。
酸素が不足しているせいだろう、顔が青白い。
モモは躊躇わず、その唇に自分の唇を重ねると、ありったけの空気を吹き込んだ。
触れた唇の冷たさに、涙が出そうになる。
嫌よ、ロー。
もう置いていかないで…。