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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第41章 消えた灯りと人魚姫の歌




一足先に洞窟から脱出したモモは、心配そうに入口を見つめる。

「モモ様、もう少し離れた方が良いのではありませんか?」

洞窟から出たとはいえ、元気を取り戻しつつある陽樹 イブの光がだんだんと強まり、海底を照らしている。

「うん、しらほしは先に上がっていていいわ。わたしはみんなが戻ってくるのを ここで待ってる。」

なるべく冷静に言ったつもりだけど、なかなか姿を見せない3人に、先ほどから動悸と嫌な汗が止まらない。

みんな、早く帰ってきて…!

「いえ。では、わたくしもここで待ちますわ…って、あれ!」

しらほしが驚きの声を上げた瞬間、洞窟から人影が出てきた。

「……ッ!」

(ロー、コハク…!)

待ちわびた人物の影にじっとしてられず、シャボンを纏ったモモは水中を降下して彼らに近寄った。


「みんな…ッ」

逆光で顔が良く見えなかったけど、洞窟から出てくる人物はローとコハク、デンしかいない。

声を張り上げて呼ぶと、それに応える声があった。

「モモ君かい? 無事に脱出していたんだね、良かった…。」

水中を自在に泳ぐのは、魚人であるデン。
そして彼の腕には、シャボンで覆われたコハクの姿が。

「コハク!? どうしたの?」

ぐったりと意識のないコハクに、驚きの声を上げる。

「ああ、心配ないよ。ちょっと気を失っているだけだ。」

ローが気絶させた…というのは、長くなるので説明を省いた。


「…ローは?」

周囲を見回すが、彼の姿だけ見えない。

「彼は…、まだ洞窟の中だ。」

「え…?」

てっきり全員一緒だと思ったのに、予想外の言葉に愕然とする。

「どうしてもコハク君を先に脱出させたかったみたいでね。すまない、僕に2人とも運べる力があれば…。」

同じ魚の中でも根魚であるオオカミウオは、回遊魚とは違って泳ぎが不得手だ。

その魚人であるデンには、ローとコハクの2人をまとめて運ぶ力がなかった。

それがわかっていたからこそ、ローはコハクだけを託したのだ。

「そんな…。」

ローがまだ中に…。

入口に目を向ければ、満ちる光はどんどん強まり、直視できないほどになっている。

モモは全身の血が、急激に冷たくなってくるのを感じていた。



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