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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第41章 消えた灯りと人魚姫の歌




それぞれの想いをのせた歌は、陽樹 イブの心にしっかりと届いた。

(ああ、そうだ、忘れていた…。)

それから思い出した。

数百年前、自分は今と同じように心を閉ざそうとしたことを。

あの時は、争いを止めない人間たちを憂いて。

そして今回は、人間の醜悪さに嫌気がさして。


陽樹 イブには天竜人というものが理解できなかった。
己を神と信じ、どんな所行を働いても許される。

そしてそれを容認する“政府”というものも理解できない。

広い世界で秩序は必要だと思う。

けれど、彼らの作る秩序はどこかおかしい。

どうして、天竜人を守る?
どうして、弱き者を守らない?

今日もほら、シャボンディ諸島から悲痛な声が聞こえる。

『ううッ、この鎖を外してくれ…。家族に、家族に会いたい…!』

『痛い、痛い! 言うことを聞くから、鞭で打たないでッ』

昔に比べて、戦争は減った。
しかし今度は、人が人を虐げる時代が訪れたのだ。

見たくない、見たくない。

こんな世界を見るくらいなら、眠ってしまいたい。

そう思った矢先だった。
あの歌が聞こえたのは…。


まず聞こえたのは、人魚姫の歌。

以前出会った人魚姫とは違う。
彼女の子孫だろう。

音程を大きく外した彼女の歌は、思い出の歌とはだいぶ違うのに、どこか懐かしかった。

彼女もまた、古代兵器ポセイドンの人魚姫。

辛いこともたくさんあっただろう。
けれど、奏でられる歌声はどこまでも無垢だった。

伝わってくるよ、その想いが。


誰かを憎んではいけない。
母の願いを受け入れ、ひたすらに約束を守った。

彼女は純粋な人。

そして彼女の輝かしい未来は、これから始まる。

期待、希望、夢、憧れ。

宝石のようにキラキラした想いが、陽樹 イブの心に染み渡る。


(……?)

歌が聞こえる。

もうひとつの歌声が。

彼女は誰だ。
人魚姫じゃない、リュウグウ王国の人間ではない。

誰だ、この温かい歌を唄うのは…。



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