第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
『波間の泡のように消える、愛しいあなたの笑い顔。』
ひとところに留まらず、住まいを転々としたからこそ、ローに出会えた。
メルディアの心の奥を知ることができたから、親友となれた。
正義に違和感を覚えたから、この海にはたくさんの海賊がいる。
ハートの海賊団、エース、ホーキンス。
海はモモに多くの出会いをくれた。
愚王がいたから、虐げられた民の心はひとつになる。
かの国が、今は信頼厚い新王のもと、新しい国へと生まれ変わったことをモモは知っている。
医療の発達したあの国は、今後たくさんの人たちの役に立つことだろう。
だから、ほら。
足元ばっかり見てないで、もっと遠くを見てみよう。
『幾年経って年老いても、ここでずっと唄ってる。君だけを想って…。』
セイレーンの力を嫌だと思ったことがないわけじゃない。
自分の人生を呪ったことがないわけじゃない。
けれど、そんなこと帳消しになるくらい、素敵なことがあるの。
ローが好き。
それだけで、世界は虹色に輝く。
『海の声を、聞かせて。』
『空の声を、教えて。』
『大地の声を、響かせて。』
『人魚の声を、聞いて。』
もし、世界がわたしに出会いをくれたなら、頭を下げて感謝したい。
わたしをローに会わせてくれて、ありがとう。
信頼できる友を、仲間をくれて、ありがとう。
わたしのお腹に命を授けてくれて、ありがとう。
『人魚の歌を聞いてほしくて、君の姿を探してる。』
もし、次に生まれ変わったとしても、わたしはまた、人間に生まれたい。
そして何度でも、あなたに恋がしたい。
この世界はこんなにも美しいよ。
わたしの幸せ、わたしの想い、どうか届け…。