第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
『空の声を聞きたくて、大地の音に耳傾け。』
『海の歌を聞きたくて、人魚の声を探してる。』
モモとしらほし、2人で声を合わせ唄う。
『好きよ そう想うほどに、会いたいと心焦がれていく。』
『波のさざめき、潮のゆらめき。君の声のように聞こえるの。』
これはかつて、人魚姫が誰かを想って作った歌。
けれどその気持ちは、モモにはよくわかった。
会えないほどに会いたくて。
風の音や波の音ですら、あなたの声に聞こえる。
そんな気持ちが痛いほどわかる。
『目を閉じれば聞こえてくる、夢の中の、君の声。』
『手を伸ばせば触れられそうで、今日も君想い唄っている。海獣たちの声にのせて…。』
しらほしには、恋という感情はわからない。
でも、キラキラしたものは知っている。
例えば、散歩に誘ってくれた彼の笑顔。
例えば、未来の約束をくれたこの小指。
わかっています、わたくしが知る世界は、まだまだほんの一部だってこと。
それでも、こんなに素敵な想いがわたくしにはあります。
それがとても幸せなのです。
できることなら、あなたに伝えたい。
この想いを唄にのせて…。
『空の声を聞きたくて、大地の音に耳傾け。』
『海の歌を聞きたくて、人魚の声を探してる。』
この世界で最も愚かな生き物は、陽樹 イブが言うように、やはり人間だと思う。
モモ自身、セイレーンであるがゆえ、人間の悪意というものをたくさん見てきた。
今まで親切だった隣人が、モモがお金になると知った瞬間、目の色を変えて売ろうとしたこともあった。
愛する人のために、間違っていると知りつつも裏切りに手を染めるメルディア。
正義を騙り、モモを捕らえ犯そうとした海兵。
国民から医療を奪い、征服しようとした国王。
世界は汚いことで、いっぱいだ。
でも、でもね。
そんなものを吹き飛ばすくらい、素敵なこともたくさんあるよ。