第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「モモ様が一緒に…?」
「うん、しらほしが何度も唄ってくれたから、わたしも覚えられたわ。」
長くはない。
けれどとても温かみのある、あの歌を。
(モモ様と一緒なら…。)
それならばできるような気がする。
だって、彼女の唄う歌は涙が出るくらい、素敵な歌ばかりだから。
そんなモモと一緒に唄うことができるなら、自分にも少しは伝えることができるんじゃないだろうか。
陽樹 イブに、想いを伝えることが…。
モモの言葉は、しらほしに勇気をくれる。
わたくしは、王女失格です。
やってみもしないで弱気になって。
強くなろうと決めたじゃないか。
ギュッと小指を握りしめる。
ルフィと、麦わらの一味のみんなと約束したのだ。
次に会う時は、弱虫も泣き虫も卒業しておくから、そうしたら今度は、地上の森へと連れて行って欲しいと。
彼らはみんな、笑顔でこの小指に約束の証をくれた。
それなのに、ここで頑張らなくてどうする。
怖じ気づいて弱虫のままでは、みんなに合わす顔がなくなる。
さあ、弱虫にさよならしましょう。
「お願いします、モモ様。わたくしと一緒に唄ってください…!」
決意を胸に、グッとモモを見つめたしらほしの瞳には、もはや怯えは見えなかった。
あるのは王族の誇りと、心を決めた強さだけ。
モモは彼女の背中を押すことができたことに、密かに喜びを感じながら力強く頷いた。
先ほどローたちが向かった、洞窟の奥へと続く入口に目を向けた。
今頃彼らは真っ暗な水中で、原因を必死に探してくれているだろう。
モモにはそこへ向かうだけの力がない。
それが歯痒くて辛かった。
でも、この場所でもわたしにできることはあったんだ。
わたしはわたしの、できることをする。
「うん、一緒に唄いましょう。」
それがわたしの役目だから。