第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「……。」
しらほしの気持ちは、とてもよくわかる。
モモにも同じような経験があったから。
今でこそ大切な宝物が増えて、世界を美しいと思える自分だけど、数年前、ローと出会うまではなにも知らない灰色の人生だった。
セイレーンの力に怯え、政府の目から逃げ、恋をすることもなかった。
そんな自分を変えてくれたのは、ローだ。
他の誰でもない、わたしが愛する人。
ローがいたから、モモは声を取り戻せたし、世界に色をつけることができた。
もし、自分の人生に彼がいなかったら…。
そんな世界は想像もできない。
モモにとって運命の人がローならば、しらほしにとって運命の人は、きっとルフィなのだろう。
そこに恋が芽生えていなくても。
けれど、ここにルフィはいない。
しらほしに勇気をくれる人は、背を押してあげられる人は、今ここにいないのだ。
だったらわたしが、代わりに押すわ…!
「ねえ、じゃあ一緒に唄いましょう。」
「え…?」
陽樹 イブには過去の想いを思い出してもらう必要がある。
それには、人魚姫であるしらほしが唄わねば意味がない。
でも、一緒にだったらモモも唄ってあげられる。
「しらほしが知らない想いは、わたしが補う。だからあなたは自分が持っている精一杯の気持ちをこめて。」
昔の自分と今のしらほしは、似ているようで全く違う。
だって彼女はもう自由で、大切なものをたくさん持っている。
それが恋や地上の世界じゃなくても、温かい想いには変わりない。
それでも足りないというのなら、代わりに自分が足してあげればいい。
ひとりでダメなら、2人で。
だってわたしたちは、友達なのだから…。