第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
消えてしまった人魚姫は、どれだけ指輪を眺めても出てきてくれる様子はない。
でも、彼女はモモたちにたくさんのことを教えてくれた。
もし、今回の事件も過去と同じ理由なら、解決方法も過去と同じはず。
“歌で気持ちを伝える”
それはモモの1番得意とすることだ。
けれど…。
「ただの歌じゃダメだわ。昔、人魚姫が唄った歌じゃないと…。」
なぜなら、陽樹 イブが心の温かみを取り戻したきっかけは“人魚姫の歌”だったから。
陽樹 イブ自身、彼女の歌を気に入り、ずっと受け継がれることを願った。
「でも、わたくしたちは あの方が唄った歌を知りません。」
意識が過去に飛んでも、人魚姫の歌だけはモモたちの耳には届かなかったのだ。
それは陽樹 イブが、その歌を忘れてしまったからかもしれない。
逆に言えば、歌を思い出せれば陽樹 イブの気持ちは蘇るのではないだろうか。
『お約束しますわ、わたくしたちの子孫に歌を引き継いでいくことを。』
「…そうよ、しらほし。人魚姫はああ言っていたじゃない。」
意識が現実に戻る前、人魚姫が次代に歌を引き継いでいくと約束したことを思い出した。
彼女の約束がきちんと守られていれば、王族であるしらほしも知っているはずではないだろうか。
「え…、でもわたくし、陽樹 イブに捧げる歌など なにも知りません…ッ」
母は早くに亡くなってしまったし、父は多忙な上に、ついこの間まで幽閉状態にあったしらほしと話す時間はそれほどなかった。
そもそも、そんな歌など存在するのだろうか。
「…ううん、あなたは知っているわ。ちゃんとお母さんから教えてもらっているじゃない!」
「え…。」
母から教えてもらった歌…?
そんなものは…ひとつしかない。
幼い頃、母がよく唄ってくれた。
あの子守歌。