第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
陽樹 イブの意識が地上に戻ったところで、モモとしらほしの意識も現実に帰ってきた。
ふと気がつくと、遥か昔の記憶を見せてくれていた人魚姫が消えていくところだった。
「待って…ッ、まだ聞きたいことがあるの!」
今見せてくれたことが本当なら、今回の事件も同じことが原因なのか。
そして、解決方法は…?
聞きたいことは山ほどあるのに、モモの呼びかけ虚しく過去の人魚姫は光の粒となって霧散してしまった。
「ああ…。」
さっきまで存在を主張していた光は、あっという間に闇に溶け込んで、あとにはランタンの明かりだけが洞窟内を照らしている。
「モモ様、今の方は行ってしまわれたのですか?」
「うん、そうみたい。」
彼女はあくまで、過去にあった出来事を伝えにきただけなのだろう。
いなくなってしまったものは仕方ない。
その代わりに人魚姫は、多くのヒントを残してくれた。
「つまり、陽樹 イブは心が落ち込んでしまうとこんなふうに輝きを失ってしまうのね。」
「そのようですね…。以前の原因は人間の方々に失望してしまったことにあったようですが、今回の原因はなんなのでしょう。」
さっぱりわからない…としらほしは首を傾げるけど、モモには思い当たる節があった。
「きっと、今回も同じよ。人間に失望したんだわ。」
「え…、でも今は昔みたいに戦争起きていませんでしょう?」
さっき見た光景では、絶えず人間たちが戦争を繰り返していたけど、今は政府に統治され、そんなことはないはずだ。
「確かに、昔ほど頻繁に戦争は起きていないわね。でも、戦争以外にも陽樹 イブを失望されるものはあるんじゃないかしら…。」
繊細な感性を持つ女性樹だからこそ、悲しんでしまうことが。
「それはいったい、どんなことですか?」
まるで見当もつかないしらほしに、モモは自分の考えを告げた。
「…天竜人よ。」
先日 自分の身に起きた出来事は、そうそう忘れられるものではない。