第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
ここは、どこだろう…。
目の前に広がるのは、自然豊かなとある島。
樹と樹が密集してできたその島は、どこか見覚えがある。
そんな島を、モモたちは高い場所から見下ろしていた。
ふと目を向けると、ふわふわとしたシャボンがあたり一面に広がっていたのに気がついた。
シャボンの出どころを確かめると、どうやらあの島から浮いてくるようだ。
もしかして、あの島はシャボンディ諸島…?
よくよく見れば、島を作る樹はヤルキマン・マングローブだ。
だとすれば、シャボンディ諸島に間違いない…はず。
モモが自分の考えに自信が持てなかったのは、ついこの前 行ってきたばかりのシャボンディ諸島とは、ずいぶんと雰囲気が違っていたから。
シャボンディパークもなければ、観光客もいない。
ただの樹に囲まれた多い島だ。
これは、どういうことなんだろう…。
モモが首を傾げた時、頭の中に声が響いた。
(ああ、もう嫌だ…。)
いきなり聞こえた声に驚き、周囲を見回すけど誰もいない。
(人間たちは、どうしてこうも争いを繰り返すのだろう。)
大地を見下ろし、憂いをおびた声。
ああ、そうか。
これは陽樹 イブの声だ。
モモたちは今、陽樹 イブの意識の中にいるのだ。
地上の人間たちを眺める世界樹は、彼らの行いにいつも心を痛めていた。
「この島には神の樹があるぞ! ここを我らの国にしよう!」
「海から敵が攻めてきた! 迎え撃て、島を渡してなるものか!」
たくさんのヤルキマン・マングローブと、それを束ねる世界樹があるこの島では、昔から争いが絶えなかった。
いくつもの部族が島に住み着き、そして奪われていく。
常にその繰り返し。
自分はただ、何千年、何万年前からずっとここで生きているだけなのに、それが原因で争いが起きる。
陽樹 イブは、それが堪らなく辛かった。