第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
現れた人魚姫は、しらほしよりも小さく、むしろモモと同じ大きさくらいの人魚だった。
「…お母様?」
状況を飲み込めず、今まであたふたとしていたしらほしが、その姿を見て目を瞬かせた。
「え…ッ。この人、しらほしのお母さんなの!?」
「あ、いえ…。よく見たら違います。でも、なんだか似ていたので…。」
光で作られた人魚姫は、顔立ちや服装がわからない。
けれど、その佇まいや雰囲気が、母 オトヒメによく似ていたのだ。
しらほしはオトヒメ以外の人魚姫を知らないから、そう思ったのかもしれないけど。
「この方が…わたくしたちを助けてくださるのですか?」
淡い光でできた人魚姫。
顔もわからなければ、どこの誰ともわからない。
普通に考えれば、弱虫な自分が恐れを抱いてしまってもおかしくはない。
けれど、不思議としらほしは彼女を少しも怖いと思わなかった。
自分から人魚姫に向かって話しかける。
「あの、陽樹 イブが光らないのです。このままでは、リュウグウ王国は闇に包まれてしまいます。なにか知っているのなら教えてくださいませ…ッ」
しらほしの必死の訴えを聞き、人魚姫はモモとしらほし、それぞれに手を差しのべた。
「え…。」
差し出された手をジッと見つめる。
どこかへ連れて行ってくれるのだろうか。
人魚姫の身体は実体のない光だから、触れられるかどうかはわからない。
それでも、モモとしらほしは共に彼女の手を掴む。
「あ…ッ」
その瞬間、目の前に見たこともない風景が広がった。