第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
淡い光を放つ指輪をそっと撫でた。
ローからもらった思い出の宝石は、ほのかに温かい。
「どうなさったのですか、モモ様。」
不思議そうにこちらを見るしらほしに、モモは自分の考えを告げた。
「うん、この子に教えてもらおうと思って。」
「教えてもらうって、なにをです…?」
“この子”とは指輪のことだろうか。
おかしなことを言う、指輪は喋ったりしないのに。
そんなしらほしの思いとは裏腹に、モモは大真面目に答えた。
「陽樹 イブが光を失った原因を教えてもらうの。」
「…!」
しらほしが驚きの表情をするのは無理もない。
自分でも、なにをバカなことを…と思っている。
指輪に答えを尋ねるなんて、まるでどこかのおとぎ話のようだ。
でも、モモは知っている。
この指輪が自分の願いを叶えてくれることを。
「モモ様、指輪はおしゃべりしませんよ?」
「そうね…。でも、信じればきっと応えてくれると思うの。」
あの時、オバケの森でそうだったように。
(お願い、もしなにか知っているのなら、わたしに教えて…!)
星を宿すエメラルドに願いをこめると、それに呼応するように、淡い光が輝きを増す。
「きゃ…ッ、指輪が…光ってます!」
「シャシャー!?」
突然の出来事に、しらほしもメガロも慌てふためいた。
反対にヒスイは、モモと同じように光を静かに見守った。
この世界で指輪の秘密を知っているのは、モモとヒスイの2人だけなのだ。
指輪の光はあの時のように、とある人型を作り出した。
けれどそれは、以前現れた子供の姿ではなかった。
上半身は人。
下半身は魚。
そして光で作られた姿だというのに、優美さが漂う装い。
女性だ。
それも…。
「…人魚姫?」
どうしてそう思ったのかはわからない。
でも、彼女から発せられる雰囲気が、とてもしらほしに似ていたから。